こんにちは、SAKE Street Mediaインターン生の榎本です。
手の込んだ料理と日本酒の素敵なペアリングももちろん良いですが、「雑な食事と一緒に、日本酒を大雑把に楽しんだって良いじゃないか!」とも思う、今日この頃。
そんな怠惰に応えるべく、本連載「ジャンクフードペアリング」では、日本酒ペアリング研究家の酒井辰右衛門さんと一緒に、「ジャンクフードと日本酒のペアリング」を徹底検証!
第2回となる今回は、ポテトチップスのなかでも強烈な味わいを持つ「カルビーピザポテト」(以下、ピザポテト)と日本酒の相性を探りました!
酒井さんに、合わせ方を聞いてみた
酒井 辰右衛門さん
J.S.A. SAKE DIPLOMA / 国際唎酒師 / 日本酒ペアリング研究家
日本酒と料理の相性を様々な角度から探るweb「日本酒ぺありんぐ総合研究所」の主宰であり、SAKE Street オンラインストアブログで数多くのペアリング記事を執筆している、スゴ腕日本酒ペアリング職人。一番好きなポテトチップスの味は「のり塩」。
今回もよろしくお願いします。本日は、「ピザポテト」に合う日本酒を検証したいと思うのですが、目星のつけ方を教えていただけますか?
よろしくね。実は、ピザポテト食べるの何年か振りだから、利きピザポテトしながら答えるね。
お〜、香りはチーズの要素がかなり強いね、強烈だ。味は結構まろやかで、ほんのりとスパイシーさがあるかな。
合わせる日本酒の考え方なんだけど、味の「同調」っていう、味わいの要素がなるべく近いものを合わせるのが基本的なセオリーかな。ピザポテトと同じように、甘み、酸味、うま味がほどほどにありつつ、苦味がない日本酒。
あと、にごりのお酒だと、同じまろやかさがありつつ、若干のスパイシーさを包んでくれるね。熟成系も同じ意味で良いかも。
なるほど、合わせる日本酒の味はバランスタイプ、加えて、にごり系・熟成系と相性が良さそうなんですね!
実は私、今日の検証に備えて、事前にピザポテトを5袋(うち2袋はBIGサイズ)開けて、孤独にペアリング練習してきたんですよ。その成果をお見せしたいと思うので、まずは私のチョイスをチェックしていただけますか?
5袋!?若いね!
じゃあ、早速榎本チョイスを見せてもらおうか!
筆者榎本が選ぶ日本酒!
私が考える「ピザポテトに合う日本酒」がこちらです!
左から
お〜、こう来たか。総じて味わいが強め、どっしり系のお酒だね。
あれ、けっこう自信あるんですけど、あまり良いチョイスではない感じですか?
まぁ、飲んでみないと始まらないよ。机上の空論はよくない。
若干雲行きが怪しい気がしますが、早速検証をお願いします!
稲とアガベ DOBUROKU 酵母無添加水もと 01
ペアリング練習の際に、「甘さ」が必要という結論に至ったんですよね。そこに、先ほど酒井さんに教えていただいた「にごり」の要素を加えたというのがチョイスの背景です。
ヘぇ〜、「甘さ」かぁ。
このお酒、ピザポテトと味の同調が見込めるタイプではないから、あんまり想像がつかないね。とりあえず、飲んでみよう!
お、いいじゃん。ピザポテトのチーズ感と、お酒のとろっとしたにごりが合う!悪くないね。
良かった!悪くないですよね!
うん、悪くないよ。ただ、お酒の味が強いかな、ピザポテトの味を上書きしちゃってるね。でも、アリだよ。全然悪くないよ。
「悪くない」がフォローに聞こえますが、とりあえず及第点超えですかね、ありがとうございます!
結果:ピザポテトのチーズ感と、どぶろくのとろっとした澱が合う。ただ、お酒の味がピザポテトよりもはるかに強い。
楽の世 山廃純米 無濾過生原酒
これは「甘さ」と「ボディの太さ」に振った感じですね。
でも、SAKE Streetのなかでもトップクラスに骨太パワフルなお酒なので、「稲とアガベ DOBUROKU 酵母無添加水もと 01」を飲んだ今、これまた味がピザポテトに勝ってしまう気がします……が、検証お願いします!
うん、お酒が強いね(笑)
やっぱり......。
まるっきり合わないってわけじゃないんだけど、お酒の味の強さが、ピザポテトを完全に圧倒しているね。味の方向性は悪くないよ。
本日4回目の「悪くない」。
ペアリング練習をしたときに、甘さに加えて、太めのボディ感も合うかなぁと思ったのですが、流石にお酒が強すぎましたね。
結果:味の方向性は悪くないが、お酒の味がピザポテトを圧倒している。
Tsuchida99
いや〜、これもお酒の味が強いでしょ、強烈だもん。
この流れだとそんな感じがしますね。でも、せっかくなので飲んでください!
……あれ?悪くない。いや、合うぞこれ。意外に良い!なんでだ?
おお、「悪くない」を超えた! 予想を裏切る好印象いただきました!
でも、これもお酒の味が強いはずなのに、なぜ?
まぁ、強いは強いんだけど、まろやかさもあって不思議と合う。なんでだろう、甘みが効いているのかな。
うーん、なぜ甘みが重要なのか、理屈はまったくわからないんだけど、ピザポテトとお酒で構成される総合的な味のバランスが、甘みによって整っている気がする。美味しいよこれ!良いチョイス!
やったぁ!ピザポテト5袋分のカロリーは無駄じゃなかった!
結果:合う。甘みが効いている。ただし、お酒の味は強い。
酒井さんが選ぶ日本酒!
最初に榎本チョイスを見たときは、お酒の味が強すぎると思ったんだけど、なんだかんだ相性悪くなかったし、「Tsuchida99」で甘さの重要性に気づかされたのは勉強になったよ。カロリーでセオリーを超えてきたね!
じゃあ、今度は俺が考える「ピザポテトに合う日本酒」を紹介しよう!酒井辰右衛門チョイスは、こちらの2本!
左から
あれ?私の土田酒造パクってません?
…………よーし、飲もうか!!
なんですか、今の間は。
不老泉 山廃仕込 特別純米 原酒 参年熟成
これは、最初に説明したセオリー通りの味わいに加えて、ピザポテトのチーズ感に、山廃の乳酸っぽさを合わせるイメージだね。
よし、55度のお燗にしました。さて、どうかな。
うーん、これでもお酒が強いか!でも、方向性は間違っていない気がする。
これまでのお酒に比べたら、味の主張が控えめなんですけど、それでもお酒の味がピザポテトに勝っちゃってますね。でも、美味しいです。私のチョイスより、甘みとうま味、ボディ感がピザポテトに寄り添いつつある気がします。
チーズが濃い部分のピザポテトにはバッチリ合っているんだけどね。いやー、これでまだお酒の味が勝るか、悔しいなぁ!
結果:若干お酒の味が強いが、ピザポテトのチーズが固まっている部分にはバッチリ合う。
Tsuchida 菩提酛
まぁ、正直なところ、榎本くんの「Tsuchida99」から着想を得たチョイスだね。
やっぱりそうじゃないですか!土田はピザポテトに合う説!?
いや、土田酒造のお酒だったら何でもよかったわけではないよ。
不思議と相性の良かった「Tsuchida99」と方向性は似ていながら、より酸味が抑えられていて、ボディもやわらかいのがこちらのお酒。いけると思うんだけど、どうだろうね。
あ、これいいですね。ピザポテトに合っています!おいしい!
来たね。今日イチだわ。甘み、うま味、ボディ感、香り、どれも文句なしに合ってるわ。
味の強さが、綺麗に揃ってますね!それぞれ食べて飲んだ後に、どっちの味が勝っているとかがなくて、これは「マリアージュ」と言える気がします!
いや〜、これ良いね。バッチリだわ。それにしても、やっぱり甘さとボディ感が必要なんだね、やってみないとわからないもんだ。
結果:バッチリ合う。甘さとボディ感、味わいの強さがピザポテトと見事に揃っている。
さらなるマリアージュを求めて
やっと見つけた好相性のペアリングにテンションが上がり、検証が止まらない二人。ところが、かなりの本数を検証しても「Tsuchida 菩提酛」に並ぶものが見当たりません。
いろいろ試しましたけど、ピッタリな日本酒がなかなかないですね。酸味が強すぎたり、ボディが軽かったり。
うん、かなり難しいね。……よし、ここは「アレ」をしよう!
え、「アレ」って、一体なんですか?
ブレンドしちゃう!
え、混ぜちゃうんですか!?そんなことして良いんですか??
よし、2:1のブレンドの完成だ!飲もう!
……あ、おいしいです!ピザポテトと綺麗に同調してます!
「不老泉 山廃仕込 特別純米 原酒 参年熟成」を単体で飲んだ際に、ピザポテトの守備範囲から外れているなぁと感じた部分が、綺麗におさまっています!
来た来た、これだよ。ブレンド大成功!
「奥琵琶湖 特撰」をブレンドすることによって、ピザポテトと味わいのバランスが釣り合ったね。
ピザポテトを食べてからお酒を飲んだ際に、それぞれ味わいが調和して一緒に切れていくのが見事ですね。本当にバランスが良い!
いやー、おいしかったです。さすが酒井さん、見事なブレンドでした。
ただ、ブレンドって高度な技術ですよね。ジャンクフードとのペアリングでそんな高等技術を使うのって、なんだか場違いな気がしてしまうのですが......
あ〜、それはね。俺は考え方が違うかな。
あくまで持論だけど、ブレンドって、むしろペアリングを簡単にする方法だと思うんだよね。
え、簡単にする?
うん。今回のピザポテト検証もそうなんだけどさ、料理と日本酒をピンポイントでバッチリ合わせるのって、実はかなり難しいことなんだよ。
もちろん探しまくれば、バッチリ合う銘柄がないこともないんだろうけど、それを導き出すよりは、ほどほどに合うお酒をベースに、自分でブレンドして味を調整する方が、はるかに楽。
たしかに、SAKE Streetの店舗在庫を縦横無尽に検証しても、合う銘柄を見つけるのに、かなり苦労しましたもんね。個人宅だったらなおのこと難しいはず。
なるほど、ブレンドは、より良いペアリングへの近道なんですね!
そうなんだよ、アホみたいにペアリングの検証ばっかりしている俺が言うんだから、そう外れた考え方じゃないはず!
クセの少ない濃醇・淡麗なお酒をブレンドして、味の調整ができれば、ペアリングをより手軽に楽しめるようになるから、ぜひ挑戦してみてほしいね。
もちろん、ただ闇雲に混ぜれば良いってわけじゃないから、そこは注意してね。
わかりました、挑戦してみます!
待ってろ、日本酒ブレンドライフ!
結果:「不老泉 山廃仕込 特別純米 原酒 参年熟成」と「奥琵琶湖 特撰」の2:1ブレンドは、ピザポテトによく合う。また、単一銘柄で料理とのズレを感じたら、ブレンドして調整するのがマリアージュへの近道である。
まとめ
今回の検証で、「ピザポテトに合う日本酒」と言えるのは
- ・しっかりめの甘み
- ・ほどほどのうま味・ボディ感
- ・若干の乳酸っぽさ
- ・全体的に、まろやかな味わい
これらが備わった、ほっこり甘ウマ系の日本酒だということがわかりました。
これに該当する、酒井さんと榎本が選ぶベスト日本酒は、以下の通りです。
- ・単一銘柄なら、「Tsuchida 菩提酛」
- ・ブレンドなら、「不老泉山廃三年熟成原酒」と「奥琵琶湖 特撰」の2:1のブレンド
また、日本酒のブレンドは、単に複雑で難しい技術というわけではなく、むしろ、料理とのペアリングを楽にする手段であるという考えを教わりました。これからは、日本酒ブレンドにまで幅を広げてペアリングを楽しみたいと思います。
ピザポテトでも、日本酒はちゃんと楽しめます!「しっかりした料理を作るのは面倒だけど、日本酒と食事を一緒に楽しみたい!」そんなときに、ピザポテトペアリングを試してみてはいかがでしょうか。きっと新たな幸せが、あなたを待っていますよ。
そういえば......
そういえば、本日撮影を担当されている二戸編集長、合いそうな日本酒のアイデアをお持ちだったりしますか?
そう言われると思って考えていました。
これです!
いや、「コカ・コーラゼロ」じゃないですか!
って、酒井さん、もう飲んでるし!
あ、コーラうまいね!しかも、ピザポテトに合う!
甘さがあるし、炭酸のシュワシュワ感とピザポテトのパリパリ感が、テクスチャーの面で似通っておいしい!
……ちょっと思いついたんだけどさ、これ、コーラと日本酒をブレンドしても、おもしろいんじゃないかな?
日本酒どうしのブレンドじゃなくて、日本酒とコーラですか!?
というわけで、「コカ・コーラゼロ」と「楽の世 山廃純米 無濾過生原酒」を2:1でブレンドした、その名も「コー楽の世」だよ!飲んでみよう!
思いついてから行動までが早い。
おいしい!合う!!
え、え?これ本当に美味しい。ほどよい甘さとボディ感、ジャンクさがピザポテトと見事にマッチしてます!なぜこんなにも綺麗にマッチしているのか!
これは、ずるいね(笑)
ピザポテトに合うのはもちろん、やわらかくなったコーラの甘さに、「楽の世」由来のうま味とボディが備わって、飲み物としてシンプルにおいしい!
お酒の風味が強すぎないところがまた良いですね。コーラとお酒のバランスが取れている気がします。これおいしい!
というわけで、3人が絶賛する「コカ・コーラゼロ」と「楽の世 山廃純米 無濾過生原酒」を2:1の割合でミックスした「コー楽の世」も、ピザポテトと本当によく合います。おすすめです!
【シリーズ:ジャンクフードペアリング】
第1回:日清 カップヌードルしょうゆ
第2回:カルビー ピザポテト
第3回:マクドナルド チキンマックナゲット