焼き鳥(タレ)に合う日本酒はコレ!おすすめ5選

前回に引き続き居酒屋メニューの王様、焼き鳥を取り上げます。今回は「タレ」です。塩よりもポピュラーなので、焼き鳥といえばタレという方も多いのではないでしょうか。

検証では「もも」「ねぎま」をメインに、「レバー」も視野に入れつつ探っていきます。

前回の記事はこちらから。
焼き鳥(塩)に合う日本酒6選

 

タレの味わいに合う酒の特徴

タレの材料は基本的に醤油・砂糖・酒・みりんで構成されます。日本人には馴染み深い甘じょっぱい味わい。さらに、このタレを肉につけて炙ることで香ばしさが加わります。

ここでの酒選びにおいては甘味がポイントになります。タレの甘味に同調させる方向性ですね。そのため、ドライな辛口よりも甘口でコクのある酒のほうが相性が良くなります。

甘口の酒といえば、香りが華やかでフルーティなタイプが思い浮かびますが、いかにも失敗しそうな気がしませんか?いえいえ、これが案外悪くないんです。ただ、ベストかと言われると微妙。あくまでバリエーションのひとつとしてお考えください。

次に気にするべきは酒の酸味。タレと酸はあまり相性が良くありません。タレ味の焼き鳥には既に五味のうち、甘味・塩味・うま味・苦味がそこそこのレベルで存在しています。ここにさらに酸味が加わると、収拾がつかなくなるというか、口内が賑やかになりすぎてしまうんですね。ですから、酸味が強いジューシーなタイプや典型的な山廃は避けたほうが無難です。

<ペアリング検証中の画像>

また、タレは塩に比べればそれなりに味の濃さはあるものの、ベースはあくまで淡白な鶏肉。それゆえ、ボディの太いパワフル系の燗酒だと押しが強すぎます。かといってあまりライトなものでも物足りないので、ボディは重すぎず軽すぎず、中庸なものをお選びください。

ただし、レバーの場合は重めの酒でも受け止めてくれます。

テクスチャーに関してはタレの柔らかさがありますので、同じく口当たりが柔らかい酒とよく馴染みます。ここに関しては塩とは真逆で、ミネラリーかつ骨格がしっかりしたタイプはあまり合いません。

それでは、ここまでのことを念頭に置いて具体的に合う酒をご紹介していきます。

 

美寿々 本醸造

 

オーソドックスに合わせるならこれ。白身魚やサーモンでも活躍する万能日常酒です。アルコール添加ならではの柔らかい口当たりと優しい甘味がぴったり。うま味のふくらみも上品で、鶏肉というそれほどパンチの強くない食材とはベストマッチです。

ぬる燗にすると、さらに柔らかさが強調されて相性がよくなります。ボディに関しては明らかにタレよりも軽いんですが、なぜか調和してしまうのはテクスチャーが合致しているからでしょう。

真鯛(白身魚)の刺身に合う日本酒4選

サーモンの刺身に合う日本酒4選

 

風の森 ALPHA Type8 大地の力 ver.2

 

 

風の森の挑戦的な一本。なんと玄米(精米歩合100%)を8割も使用。確かに言われてみれば中盤の力強いうま味と良い意味での雑味に玄米を感じ取ることができます。ゴツいのに洗練されたニュアンスもあって唯一無二の存在感。

ももやねぎまも悪くないですが、レバーなどのクセのある部位と複雑な旨みが同調します。燗にしても面白いのでぜひお試しを。

 

流輝 純米吟醸 桃色 無濾過生

 

今回の問題作。なぜこれが合うのか筆者もよく分からないんですが、合うんです。 甘酸っぱい酒なので酸味が邪魔になるかと思いきや、そこまででもなく。口に含むと最初に甘味がリンクした後に酸が脂をすっと流してくれます。

強めの甘みとボディの軽さ、口当たりのまろやかさなど、タレの焼き鳥に同調するポイントが多いので多少酸が強くてもあまり問題にならないのかもしれないですね。 とりあえず、騙されたと思って合わせてみてください。

 

HEAVEN's DOOR 純米大吟醸無濾過原酒

 

精米歩合40%ながら、奥行きのある米のうま味もしっかり内包しています。1年以上の常温熟成を経ているので、それも影響しているのでしょう。香りは派手すぎず、ほどよい熟成香も。これがタレの焦げた風味とばっちりリンクします。

そして特筆すべきは口当たりのまろやかさ。この柔らかさと熟成感が両輪でタレとの同調性をさらに引き上げてくれます。

 

華鳩 六段仕込 貴醸酒 2015BY

 

六年熟成した貴醸酒。紹興酒のような風味も感じられる面白い酒。酒質がほぼタレそのものといっても過言ではありません。

いくら甘いタイプが合うと言っても、さすがにここまで行っちゃうと、ももやねぎま相手では酒が強すぎて合いません。しかし、レバーだけは別。これがめちゃくちゃいい!タレ味のレバーには古酒の焦げ香と強い甘味を持った酒が最高に合うのです。

 

まとめ

今回は個性あふれる面白い酒ばかり紹介しましたが、主張の強い酒よりも、むしろどこにでもあるようなクラシックなデイリー酒のほうが全般的には堅実に合いますね。

とにかく「甘味が強め」「口当たりの柔らかさ」「酸が控えめ」。この3点をキーにして酒を選ぶとタレの焼き鳥の美味しさをより引き出せますよ!

 

酒井 辰右衛門

酒井 辰右衛門

J.S.A. SAKE DIPLOMA / 日本酒ペアリング研究家

ミュージシャンとして活動する中で、ひょんなことから日本酒に目覚め、一気に沼へ。 現在は日本酒と料理の相性を様々な角度から探るweb「日本酒ぺありんぐ総合研究所」の主宰として日々飲酒に励んでいます。食中酒としての日本酒の可能性を広げるために、およそ合いそうもないエスニックや洋食、スイーツなどとの相性を探るのがライフワークになっています。初心者向け日本酒セミナーの講師としても活動中。