【超訳・日本酒用語①】味が「ノル」って、どういうこと? 教えてぽん店長!

ぽん店長と大倉山廃特別純米

  

「淡麗辛口」「濃醇」「老香」……などなど、日本酒を表現する言葉の中には、ちょっとわかりにくい(かつ、なんだか偉そうでマウントを取られている気分になったり、質問してみたらさらによくわからない言葉が出てきてもう質問すること自体がいやになる)「日本酒用語」がありますよね。

このコーナーでは、SAKE Streetのぽん店長に、わかりにくい(かつ、周囲が言ってるから雰囲気に流されて使ってるんじゃないの?ってなるような)日本酒用語を、とことん解説してもらいます!

初回は「味がノル」です。 ノルって……何が、何に、どうやって??  

「ノル」とは、日本酒の成長のこと?

 

──ぽん店長、よろしくお願いします。

 

はい、私なりにがんばって説明しますね。

 

──早速ですが、日本酒の「ノル」について教えてください。

 

ぽん店長(考え中)

えー、日本酒を飲んだときに「この子(=日本酒)、時間が経てばもっと旨くなりそう!」って思うときがあるんです。そういう子は「ノリ」ますね。

 

──……もう少し、具体的にいいでしょうか。

 

ぽん店長(喜び)

そうだ! 成長期! 成人のちょっと前みたいな子です。もうちょっと熟したらいい味になるって子! ほら、いますよね? いますよね!?

 

──いや、ちょっとわからないです。

 

説明する、ぽん店長

店長、感覚派だった……。

新しいお酒と古いお酒、比べてみると「甘さ」が全然違う!

 

──開始3分で日本酒用語の迷宮に入ってしまったため、実際に「ノル」前後のお酒を飲み比べさせてもらうことになりました。お酒は奈良県・大倉本家さんの「大倉 山廃特別純米」。まったく同じブランド、同じ材料・製造方法のお酒で、違いは製造された年のみ。2018年、2019年、2020年、2021年で比べてみます。

 

大倉山廃特別純米を選ぶ、ぽん店長

SAKE Streetには、お酒の飲み比べメニューもあります。

 

ぽん店長(通常)

……いかがですか?

 

──あ、全然違う! 2020、2021年の方はすっきり飲みやすくて、 2018、2019年のほうが甘みが強い!

 

ぽん店長(喜び)

そうなんです! 若いほうがみずみずしくて透明感があり、古い方は柔らかな甘さが増しますよね。

 

 ──なんだかわかった気がします。「ノル」というのは、「甘み」が増えるのですね。なにも加えていないはずなのに、不思議。

 

ぽん店長(考え中)

ええ、なにも加えていないはずなのに、時間が経つと「ノル」んですよね。なんでだろう。 

???

それは、瓶の中の成分自体にはほぼ変化はなくとも、その結びつき方が大きく変化しているからです。(早口で脳内再生してください)

二戸編集長、登場

誰?

 ──……えっと?

 

二戸さん

私はSAKE Streetの二戸です。最初からここにいましたよ。

 

説明しよう。彼はSAKE Streetの創設メンバーのひとり・二戸浩平さん。SAKE Streetのメディア運営の責任者を務める。日本酒への造詣がはんぱなく、ロジカル日本酒論客として業界に名を轟かす。つまり、すごい助っ人が参戦してきたということ。

 

二戸さん

結びつき方というのは、たとえば時間の経過に伴ってアミノ酸と糖が反応することで起きるメイラード反応ではソトロンなどの香り成分が生成するほか、その副反応であるストレッカー分解ではピラジン類、これはほうじ茶のような香りがする成分ですね。こういったものがつくられたりします。エステル結合という、アルコールと日本酒にある酸が結合したり、反対に分解したりすることで起きる変化もありますね。あとは、水素結合といってお酒のように水とアルコールが混ざった液体では分子の配置が…………

 

──全然わかんないす。

 

二戸さん

……では「味」にしぼっていいますね。いいですか? 日本酒の味わいは主に「甘」「酸」「旨」「苦」で構成されます。この中で「酸」以外の要素は時間とともに増します。

 

日本酒の味が「ノル」イメージ

 

二戸さん

例えば、搾りたての酒質は、左のような味のバランスだとします。

 

──搾る? 酒質?

 

二戸さん

ああすみません、「できたての、日本酒の味」です。とにかく、最初は「酸」が際立っていたとします。時間経過と共に「甘」「旨」「苦」の要素がどんどん増していき(図右)、バランスのよいタイミングがやってくる。これが「ノル」です。

 

私たち酒販店の店員は日々テイスティングを行うのですが、「このお酒の味だったら、もっと甘さや旨さがあるといいのにな……」と感じる日本酒に出会うときがあります。そんな時に数ヶ月や数年寝かせておくと、ある日バランスの取れた「ノル」日本酒に育っていることがあるのです。

 

──開栓して空気に触れて変わる……ワインを一度デキャンタにいれて放置するみたいな……。

 

二戸さん

ビンテージの方が近いですかね。「熟成」の一種だと思ってください。

 

──なるほど。「ノル」とはお酒の熟成で、味が増えてバランスが取れた状態ということですね。

 

ぽん店長(通常)

あとは「まろやかになる」という変化もありますね!


ノッタお酒は、重たいお酒?

 

──今日はせっかくなので「ノル」お酒を買いたいのですが、Sake Streetさんにはそういうお酒ってありますか?

 

ぽん店長(喜び)

もちろんです! というか、うちの子たちは大抵ノリにノッテるんですよね。 

 

──中でも、一番ノッテいるものがいいです!

 

二戸さん

あのですね、「ノル」とは、あくまでお酒自体の変化であって、絶対的な概念ではありません。順位や優劣というのはつけづらいものであり……

 

──そういう話はいいので、とにかく最高にノッテいるのをください。

 

二戸さん

……

ノった酒を探す二戸編集長とぽん店長

「よーし、ノッタ酒探してやろうぜ」と、酒屋さん魂に火がついた様子

 

金鼓 山廃本醸造 火入原酒 2003年醸造(大倉本家)と奥琵琶湖 特撰(上原酒造)

 

ぽん店長(通常)

こちらがうちで最も「ノッテ」いる子たちです。

金鼓 山廃本醸造 火入原酒 2003年醸造(大倉本家)

奥琵琶湖 特撰(上原酒造)

 

──激シブじゃないですか! 「ノル」って、極めると田舎のおじいさんとかが飲んでそうな、ガッツリ重いお酒になるのですね!

 

ぽん店長(通常)

まあ、熟成ですからね。でも、この子たちはすごいですよ。特に「ノッテ」ます。

 

──こういう重めのお酒って、最近流行りのフルーティーなお酒と対極にあるような気がするのですが、「ノル」って、結構ニッチな存在なんですか?

 

ぽん店長(考え中)

どうでしょう……私や二戸さんは「ノル」お酒が好きですけどね。あとは……もともと軽くてフルーティーなお酒が好きでも、飲み屋さんなんかで「ノル」お酒を知り、そこからハマっていく人は多い印象です。きっと、日本酒をいろいろ飲まれている人の多くは、お酒の好みが何周かしているんじゃないですかね。

 

──え、好みって「回る」のですか?

 

好みは回る

 

ぽん店長(通常)

ええ、軽くてフルーティーなお酒をずっと飲んでいると、飲み疲れたり、飽きたりすることがあるんですね。そんな時は「ノッタ」味がほしくなります。次に「ノッタ」お酒ばかり飲んでいると、次は重さに疲れて軽い味がほしくなる。 

 

──無限ループ。

 

ぽん店長(喜び)

そうそう、私自身がそうなんですよ。だから、「ノル」お酒が好きな人に年代や性別は関係ないですし、時期によっても変わってきます。もちろん、その日の気分で選んでもいいですしね。

 

フレッシュなお酒や味わいがのったお酒、それぞれのお酒に素敵な魅力があります。店頭では、販売しているほぼ全商品、少量で有料試飲ができますので、ぜひいろいろ試してみてください! お好きな味との出会いの場になれたらうれしいです!

 

──ぽん店長、二戸さん、ありがとうございました!


まとめ

・味が「ノル」とは、熟成による変化のこと

・「甘」「旨」「苦」が増えて、まろやかになる

・性別や年代にかかわらず、ノルお酒沼にハマる人がいる

 
大久保 敬太(クリーミー大久保)

大久保 敬太(クリーミー大久保)

編集・ライター/日本酒ナビゲーター

雑誌や書籍のライター・編集を経て、現在WEB関連の編集者。お酒が好きで、お酒を取材して楽しさ・奥深さを伝えたい、できればおいしく飲みながら書きたい、しかし飲むと誤字が増えるということに悩んでいる。