国内外でその高い技術が評価されている「山丹正宗」醸造元の八木酒造部(愛媛県)。定番酒には地元の酒米「松山三井(まつやまみつい)」を使用するなど、地域に根ざした酒造りをしています。
今回の酒蔵だよりでは、今治市唯一の酒蔵として、どのように地元と関わっているのか、八木酒造部8代目蔵元の八木伸樹さんに綴っていただきました。
20年前の苦い思い出

清酒「山丹正宗」醸造元の八木酒造部は、愛媛県今治市にあります。今治市は人口約14万人で、四国では県庁所在地4市に次ぐ5番目に人口の多い街です。広島県と愛媛県を結ぶしまなみ海道の拠点であり、サイクリストの聖地として、世界中から観光客が訪れます。産業としては造船、海運、そして今治タオルが有名です。また郷土料理として、鯛飯、今治焼き鳥、焼き豚玉子飯などがあります。
八木酒造部はこの今治市で唯一の酒蔵なので、山丹正宗は船の進水式や神社のお神酒、冠婚葬祭とさまざまな場面でご利用いただいています。とは言っても、20年前に家業に入った際、地元は県外のお酒だらけで、酒販店に挨拶に行っても歓迎されず、当社のお酒は地元からあまり大事にされていないと感じました。
そこで、私が立てた目標が「地酒である以上、地元に密着し、地元に愛される存在であるべき」というものです。
地元に愛される存在になるために

まずは美山錦や八反錦といった県外の酒米の使用をやめ、テロワールを意識した酒造りを始めました。そして何より品質を重視して、地元の人に「美味しい」と思ってもらえる酒造りを目指し、努力を積み重ねてきました。
イベントにも力を入れました。当社では年に2回、蔵でお祭りをおこないます。5月の蔵開きと、11月の新酒まつりです。いずれも10種類以上の日本酒の飲み比べと、飲食店やキッチンカーにもご協力いただき、蔵の敷地内で大いに食べて飲んでいただくというイベントです。
以前は新酒の販売がメインのイベントでしたが、「蔵を大宴会場にする」というコンセプトに切り替え、文字通り朝から夕方まで大宴会が続くイベントになりました。県外からのお客様も含め、毎回1,000人以上の来場者があり、おかげさまで大盛況です。次回は11月28日(土)、29日(日)の2日間です。入場無料で予約も必要ないので、是非これを機会に今治を訪れてみてください。
これからも今治の酒蔵として

地元企業ともさまざまな取り組みをしています。現在販売している商品としては、地元のゆるキャラ「バリィさん」との「バリィさんの寝ざけ」、「みきゃん」との「みきゃんカップ」、有機栽培農家さんとの「オーガニック」などがあります。「オーガニック」では、地元タオル企業にお願いして、今治タオルラベルを作成していただきました。
お酒以外では、お酒を使ったバームクーヘンや酒粕ソフトクリーム、酒まんじゅうなどの他、蔵の近くのスーパーでは酒粕を使ったお総菜なども販売しています。
20年前は地元に大事にされていないことにショックを受けましたが、今では今治市長をはじめ、市民の皆様から全面的に応援していただいているという感覚があります。実際に地元で主要な飲食店のほとんどが取り扱ってくれるようになりました。社員のモチベーションも上がり、会社として地元のためにもっと頑張ろうという好循環が生まれています。
東京などの大都市圏や海外で売り上げを伸ばすことも重要ですが、地酒としての信頼や地元との深いつながりをこれからもしっかり維持していきたいです。
【酒蔵だより:八木酒造部】
- 2023年夏:「水もと仕込みに初挑戦した「山丹正宗 華帯」」
- 2023年秋:「水酛造り第2弾「山丹正宗 MINAMOTO」について」
- 2025年春:「蔵の柱。定番酒「山丹正宗 純米酒 松山三井」ってどんなお酒?」
- 2025年夏:「連続金賞受賞の裏にあった決断とこれからの酒造り」
- 2025年秋:「令和の米騒動下で迎える新たな酒造りの季節」
- 2026年冬:「世界6カ国の日本酒&グルメ事情を蔵元がレポート!」
- 2026年春:「造船の街・今治で生まれた”あなたの船出を祝う”日本酒。「山丹正宗」新商品誕生の物語」
- 2026年夏:「地元・今治に愛される存在であるために。蔵の祭りに1000人が集まる「山丹正宗」と地域の絆」









































